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最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)4123号 決定 1954年3月25日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人河原太郎の上告趣意第一点は、違憲をいうが、所論公職選挙法二二一条一項一号にいわゆる供与の中には所論のごとく実費弁償を含むものと解すべき余地はなく、所論のごとく漠然たるものではない。それ故、所論の違憲論は前提を欠き適法な上告理由に当らない。次に選挙運動者となるかならないかは、他から強制されているわけではなく、選挙運動者となる者の自由意思にまかされているところである。公職選挙法二二一条一項四号において選挙運動者がその報酬を受けることを禁じているのは、選挙の公正を確保せんとするにある。自己の意思でかように法律上報酬を受けることを禁止されている選挙運動者となりながら、選挙運動者として報酬を受けることを禁止されるのは財産権の侵害となるという違憲論は、その前提において認めることのできないものであって、適法な上告理由に該当しない。

同第二点は単なる法令違反、同第三点は量刑不当の主張であって、これまた適法な上告理由に当らない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員の一致で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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